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過去のCMデータを元に、新規CMによるインストール増加数を予測する

こんにちは。shobyです。

フリルでは定期的に全国でCMを放送しており、各CMについて分析を行っています。

今回は、過去のCMデータを元に、新規CMによるインストール増加数を予測し、CMに合わせたキャンペーンのタイミング検討や、サーバーの負荷対策に活かす方法をご紹介します。

概要

  • CM効果予測の活用方法
  • 予定GRPからインストール数を予測する
  • CMの残存効果をモデリングし、予測をする
  • フリルでのインストール増加数予測の活用例

CM効果予測の活用方法

CM効果を予測することで、マーケティング施策のタイミング検討や、サーバー負荷対策に利用することができます。

CM中は新規ユーザーが増加し、既存ユーザーの復帰率も高まるため、サービスが活性化します。 そのため相乗効果を狙い、それに合わせてキャンペーンなどのマーケティング施策を行うことが一般的です。 CMによる効果を予測することで、新規ユーザーの増加タイミングを把握することができれば、マーケティング施策の効果を更に高めることができます。

また、サービスの活性化に伴い、CM期間中はサーバーの負荷が上昇します。 新規ユーザーが増加するピークのタイミングが予測できれば、CM前のサーバー負荷対策に役立ちます。

予定GRPからインストール数を予測する

CMは放送前に、日毎の予定投下量(GRP)を入手することが可能です。*1 そのため、CM放送前の段階で、予定GRPからインストール数を予測することができます。

CMの残存効果をモデリングし、予測をする

CMには長期的に広告効果が残存するという、残存効果を呼ばれる効果があることが知られています。 この残存効果を考慮しないとインストール数の予測を正しく行うことができません。

今回は、広告ストックモデルを使用することによって、残存効果をモデリングし、予測に用います。

CMの残存効果に関しては、こちらの記事をご覧ください。

in.fablic.co.jp

広告ストックモデル

広告ストックモデルとは、広告が消費者の頭の中に累積されるため、広告に露出した時点のみではなく、長期的に効果が残存することを表したモデルです。*2

時刻tでの広告量をa_tとすると、広告累積量A_tは以下の式で表されます。

 { \displaystyle
A_t =  \sum_{i=0}^{\infty}\lambda^{i} a_{t-i}
}

ここで、 \lambdaは広告の効果が繰り越させる割合であり、残存効果を表します。

広告ストックがある状態で広告を打ち切った場合、残存効果パラメータ\lambdaの違いによって以下のように減衰します。

f:id:shoby:20170911194559p:plain

このモデルをGRPに当てはめ、GRPストック量を計算することで、広告残存効果を考慮したインストール数の予測が行えるようになります。

適切な残存効果パラメータを選ぶ

過去のCMデータを元に、適切な残存効果パラメータ\lambdaを選びます。

フリルでは、過去のデータより、広告投下量とインストール増加数*3は、おおよそ線形増加の関係にあることが分かっていました。*4

そのため、GRPストックとインストール増加数の相関係数がもっとも高くなる\lambdaを総当たりで選びました。*5

適切な残存効果パラメータを選んだ後の、インストール増加数とGRPストックは以下のようになります。

f:id:shoby:20170911202704p:plain

GRPストックとインストール増加数は相関しており、線形増加の関係にあるため、1GRPストック単位のインストール増加数を求めることができます。

CM期間中の時刻tでのGRPストックをA_{t}、インストール増加数をI_{t}とすると、1GRPストック単位のインストール増加数kは以下の式で求められます。

 { \displaystyle
k = \frac{\sum_{t=0}^{\infty}I_{t}}{\sum_{t=0}^{\infty}A_{t}}
}

これを元に、新規CMに対するインストール増加数の予測を行います。

新規CMに対するインストール増加数の予測

過去のCMから求めた広告残存効果パラメータ\lambdaと、1GRPストック単位のインストール数kを元に、新規CMに対するインストール増加数を予測します。

新規CMの予定GRPは分かっているため、残存効果パラメータ予定\lambdaから予定GRPストックを求めることができます。

また、予定GRPストックに対して、1GRPストック単位のインストール数kをかけることで、予測インストール増加数を求めることができます。

時刻tでの予定GRPをa_tとすると、予測インストール増加数P_{t}は以下のように求めることができます。

 { \displaystyle
P_t = k \sum_{i=0}^{\infty}\lambda^{i} a_{t-i}
}

実際の予測値は以下のような形です。

f:id:shoby:20170911211817p:plain

フリルでのインストール増加数予測の活用例

フリルではCMによるインストール増加数を活用することにより、サーバー負荷が高まるピーク時期を予測し、前もって負荷対策を行えるようになりました。

CMに合わせたマーケティング施策は以前から行なっていましたが、今後は予測の結果を元に、より最適な施策を行えるよう検討していく予定です。

まとめ

フリルでは、過去のCMデータを元に、新規CMによるインストール増加数の予測を行なっています。

CMによるインストール増加数を予測することにより、CMに合わせたマーケティング施策を行うタイミングの最適化や、CM前のサーバー負荷対策に利用することができます。

*1:広告代理店に依頼すればデータを入手できます。

*2:照井信彦, ウィラン・ドニ・ダハナ, 判正隆. “4.2.4 広告効果測定モデル”. マーケティングの統計学. 朝倉書店. 2010. 88-89

*3:CMにより増加したと考えられるインストール数のこと。ベースラインからの差分で求める。詳細はこちらを参照してください http://in.fablic.co.jp/entry/2017/07/13/100000

*4:CMによるユーザー獲得にまだ余地があり、投下量に比例してインストール数が増加しているのだと考えられます。今後、線形増加しなくなる可能性は大いにあります。

*5:λは0〜1であるため、0.1刻みで最も相関係数が高くなる値を選びました。この総当たり手法は、Stanford UniversityのMachine Learningコースにおける機械学習のパラメータチューニングの方法を参考にしています。